【相続コラム】Q親からもらったお金、兄弟に言わなくても大丈夫?  ワンコ税理士の損をしない相続Vol.45

2026.08.10 ● ワンコ税理士の損をしない相続

Vol.45
親からもらったお金、兄弟に言わなくても大丈夫?

「家を買うとき、父から500万円を出してもらった」
「結婚するとき、母に費用を負担してもらった」
「独立する際、親から事業資金を援助してもらった」

親子の間では、こうしたお金のやり取りは珍しくありません。
親が自分のお金を誰に渡すかは、基本的に親が決めることです。
贈与を受けるときに、兄弟の同意を得たり、必ず報告したりする決まりはありません。
 
ただし、親が亡くなった後まで「自分と親だけの話」で済むとは限りません。
相続の手続きで父の通帳を確認したところ、数年前に兄へ500万円が振り込まれていた。兄は「家を買うときにもらった。父が納得して出したお金だから問題ない」と言う。
一方、妹は「そんな話は聞いていない。私は何ももらっていない」と納得しない。
 
実際の相続では、このような行き違いが起こります。
問題になるのは、贈与を受けたこと自体だけではありません。
後から分かったことで、「ほかにも隠しているのではないか」という不信感が生まれ、遺産分割の話し合いが止まることです。

 

住宅資金や事業資金として受け取ったお金は「相続の前渡し」になることがある

相続人の一人が、親から住宅購入資金、事業資金、まとまった結婚資金などを受け取っていた場合、その贈与が「特別受益」に当たることがあります。
 
特別受益とは、相続人の一人が生前に受けた、相続財産の前渡しと考えられる利益です。
特別受益に当たれば、残っている遺産だけを分けるのではなく、生前にもらった金額も考慮して相続人の取得額を調整します。
 
たとえば、父の遺産が3,000万円で、相続人が長男と長女の二人だったとします。
長男が住宅資金として1,000万円を受け取り、それが特別受益に当たる場合、3,000万円を1,500万円ずつ分けるのではありません。
生前贈与を含めた4,000万円を基準にすると、二人の取り分は2,000万円ずつです。
長男はすでに1,000万円を受け取っているため、残った遺産から1,000万円、長女は2,000万円を取得する計算になります。
 
もちろん、親から受けた援助がすべて特別受益になるわけではありません。
日常の生活費や通常の学費、一般的な金額の結婚祝いまで、すべてを細かく精算する制度ではないからです。
 
判断では、金額、使い道、贈与を受けた時期、親の資産状況、ほかの兄弟への援助などを確認します。
住宅の頭金や開業資金のように、ある程度まとまった援助は、問題になりやすいものです。
 

 

税金の扱いは、遺産分割とは別に考える

兄弟間の公平を考える特別受益と、贈与税や相続税の計算は別の制度です。
親から生活費や教育費を受け取っても、通常必要な金額を必要な都度受け取り、実際にその支払いに使っていれば、贈与税はかかりません。
しかし、「生活費」という名目でまとまったお金を受け取り、預金したり、株式や不動産の購入に使ったりすれば、贈与税の対象になります。
 
住宅取得資金には非課税の特例がありますが、親から住宅資金を受け取れば自動的に非課税になるわけではありません。
受贈者や住宅についての要件があり、期限内の贈与税申告も必要です。
 
また、親の相続で財産を取得する人が、その親から暦年課税による贈与を受けていた場合、相続開始日に応じて、相続前の一定期間の贈与が相続税の計算に加算されます。「110万円以下で贈与税がかかっていないから、相続税にも関係ない」とは言い切れません。

 

振込記録や贈与契約書など資金の使い道が分かる資料を残しておく

相続が始まってから、「あれは贈与だった」「いや、返してもらう予定の貸付金だった」「生活費として預かっただけだ」と意見が分かれることがあります。
こうした争いを避けるには、振込記録だけでなく、贈与契約書や資金の使い道が分かる資料を残すことが大切です。
 
親が「この子には住宅資金を援助したが、相続のときには差し引かなくてよい」と考えているなら、その意思も遺言書などの書面で明確にしておくことが大切です。
ただし、遺留分を侵害する多額の贈与は、親の意思だけで問題がなくなるわけではありません。
 

生前贈与は将来の相続まで見据えて整理しておくことが大切

親からお金をもらう時点で、兄弟への報告が法律上必須というわけではありません。
しかし、多額の住宅資金、結婚資金、生活援助、事業資金などは、将来の遺産分割や相続税の申告に関係します。相続後に初めて分かれば、お金の問題以上に家族の不信につながります。
 
大切なのは、「兄弟に知られなければよい」と考えることではありません。
誰が、いつ、いくら受け取り、何に使ったのかを記録し、親の考えを残しておくことです。
 
生前贈与は、渡した時点で終わる話ではありません。
将来の相続まで見据えて整理しておくことが、家族の負担を減らします。

 
 
 

奥税理士 ワンコ税理士の損をしない相続
よみふぁみでは、理解するのが難しい「相続」をワンコ税理士こと、奥典久税理士の協力で、「相続」に関する疑問を一問一答で解説するコラムを連載しています。
「ワンコ税理士の損をしない相続」コラム一覧

Profile
奥税理士 ワンコ税理士の損をしない相続
奥典久税理士事務所代表(大阪市北区)
相続税法の講師経験を活かし、相続税の申告や節税対策、遺言、家族信託、事業承継まで幅広く対応。

豊富な実績と丁寧な対応で多くの相談者から信頼を集めている。

  • ホームページへリンクアイコン

一覧へ戻る

おすすめ記事

新着記事

新着記事をもっと見る >
監修
よみふぁみ編集部運営:読売情報開発大阪
読売情報開発大阪が運営する、お得で楽しい生活情報Webメディア。関西を中心にグルメ・旅・エンタメ・レシピなど暮らしに役立つ情報をお届けします。読売新聞グループ。