【相続コラム】Q49 同じ「年間110万円」でも大違い? 相続税に足される贈与、足されない贈与 |ワンコ税理士の損をしない相続

Vol.49
同じ「年間110万円」でも大違い? 相続税に足される贈与、足されない贈与
「相続時精算課税にも、年間110万円の控除ができたそうですね。今までの110万円贈与と、何が違うのですか」
最近、こうした質問を受けることが増えました。
これまで「毎年110万円まで」というと、一般的には暦年課税による贈与を指していました。ところが令和6年から、相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除が設けられました。
金額が同じなら、どちらを使っても結果は変わらないように思えます。
しかし、贈与した人が亡くなったときの扱いは大きく違います。
暦年課税の110万円は、亡くなる前の一定期間分が相続税の計算に足される
暦年課税では、1月1日から12月31日までに受け取った財産の合計額が110万円以下なら、原則として贈与税はかかりません。
ただし、その贈与を受けた人が、贈与した人から相続や遺贈で財産を取得した場合、亡くなる前の一定期間内の贈与は相続税の計算に足されます。
この期間は令和6年1月1日以後の贈与から段階的に延び、令和13年1月1日以後に始まる相続では7年間になります。
なお、従来の3年を超えて延長された4年分については、合計100万円までは足されません。
たとえば、父から毎年110万円ずつ10年間贈与を受け、その後に相続が起きたとします。
7年間が加算対象となる場合、足されるのは直前3年分の330万円と、その前の4年分440万円から100万円を引いた340万円。合わせて670万円です。
10年間で1,100万円を受け取り、贈与税は一円もかからなかった。それでも、そのうち670万円は相続税の計算に入ります。
贈与税がかからないことと、相続税の計算から外れることは、別の話。もう一つの「年間110万円」は足されない
一方、相続時精算課税の基礎控除は扱いが異なります。
父からの贈与について相続時精算課税を選び、毎年110万円ずつ受け取った場合、その基礎控除の範囲内の財産は、父が亡くなったときも相続税の計算に足されません。
父からだけ相続時精算課税による贈与を受けている前提なら、毎年110万円を10年間で合計1,100万円。この1,100万円は相続税の計算には戻りません。先ほどの670万円が相続税の計算の対象になるようなことは生じないのです。
ここだけを見ると、「それなら相続時精算課税を選んだ方が得では」と思うかもしれません。
しかし、そう単純ではありません。

一度選ぶと、元には戻せない
相続時精算課税は、贈与する人ごとに選択します。
父からの贈与は相続時精算課税、母からの贈与は暦年課税、という使い分けはできます。
ただし、一度、父からの贈与について相続時精算課税を選ぶと、その父から受ける贈与を暦年課税に戻すことはできません。その後も父からの贈与には相続時精算課税が続きます。
利用できるのは、原則として贈与する年の1月1日現在で60歳以上の父母や祖父母などから、18歳以上の推定相続人である子、または18歳以上の孫などへの贈与です。
最初に選ぶ年には、翌年2月1日から3月15日までに相続時精算課税選択届出書などを提出します。
また、年間110万円を超える部分については、累計2,500万円までの特別控除があります。
この特別控除を使う場合は、贈与税の申告が必要です。
これを超えた部分には20%の税率で贈与税がかかります。
そして、年間110万円の基礎控除を超える部分は、贈与した人が亡くなったとき、原則として贈与時の価額を基に相続税の計算に足されます。
そのため、値上がりが見込まれる自社株、不動産などでは有利に働くことがあります。
反対に、その後大きく値下がりしても、原則として贈与時の価額を基に計算される点には注意が必要です。
土地を渡すときは、もう一つ注意がいる
自宅や事業用の土地を相続したときには、一定の要件を満たせば、評価額を最大8割減額できる「小規模宅地等の特例」があります。
ところが、生前贈与で取得した土地そのものには、この特例を使えません。
これは暦年課税でも相続時精算課税でも同じです。
相続税の計算に贈与した土地の価額が足されたとしても、その土地に小規模宅地等の特例を使えるようになるわけではありません。
土地を生前に渡すか、相続まで残すかによって、税負担が大きく変わることがあります。

どちらが得かは「110万円」だけでは決まらない
暦年課税には、加算の対象期間より前の贈与は相続税の計算から外れるという利点があります。早くから長く続けられるなら、その効果は大きくなります。
一方、相続時精算課税では、年間110万円の基礎控除部分が相続税の計算に足されません。
どちらを選ぶかは、年齢や贈与できる期間だけでは決まりません。
毎年いくら渡すのか。
財産は預金なのか、不動産なのか、自社株なのか。
そして、渡したあと、ご本人の生活資金は十分に残るのか。
これらを総合的に考えて、どちらを選択するかを検討することが重要です。
同じ「年間110万円」でも、選ぶ制度によって相続時の結果は変わります。
今年の贈与税がゼロになるかだけを見るのではなく、その先の相続まで含めて考えること。
一度選ぶと戻せない制度だからこそ、そこまで見たうえで決めることが大切です。

「ワンコ税理士の損をしない相続」コラム一覧
おすすめ記事
新着記事
