【相続コラム】Q実家の土地、誰が相続するかで税金が数百万円変わる |ワンコ税理士の損をしない相続Vol.48

2026.09.14 ● ワンコ税理士の損をしない相続

48_新奥税理士の損をしない相続

Vol.48
実家の土地、誰が相続するかで税金が数百万円変わる

「兄が実家を継ぐことになったので、土地は兄の名義に」

打ち合わせでそう聞いて、私は少し待ってもらいました。お兄さんは20年前に家を出て、県外で持ち家を建てて暮らしています。実家に残って親御さんと同居していたのは、弟さんのほうでした。

 

同居していた親族などに適応される「小規模宅地等の特例」

亡くなった方が住んでいた自宅の土地には、一定の要件を満たすと、330㎡まで土地の評価額を80%減額できる「小規模宅地等の特例」があります。たとえば、対象となる土地の評価額が5,000万円なら、1,000万円として相続税を計算できることがあります。
 
ここで減額されるのは土地の評価額で、相続税そのものが80%安くなるという意味ではありません。それでも、土地の評価額が大きいご家庭では、納税額に大きな差が出ます。
条件はいくつかありますが、大きなポイントの一つが「亡くなった方と同居していたか」です。
 
実家を出て別に持ち家を構えているお兄さんは、原則としてこの特例が使えません。
一方、実家で親御さんと暮らしていた弟さんなら、ほかの要件を満たせば使えます。
同じ土地、同じご兄弟でも、誰が相続するかによって納税額が数百万円変わることがあります。
もちろん、税金のためだけに取得者を決めるのは違います。誰がその家に住み続けるのか、ほかにどんな財産があるのか、兄弟の間でどのように分ければ納得できるのか、といった事情を合わせて考える必要があります。
 
ただ、税額にこれだけ差が出ることを知らないまま決めてしまうのは、あまりにもったいないと思います。
たとえば、弟さんが実家を相続し、その分お兄さんが預金など別の財産を多く受け取る方法もあります。誰か一人が得をするように考えるのではなく、家族全体で財産の分け方を調整する。そのときに、税金の違いも判断材料の一つにする、という考え方です。
 
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「同居していた」かどうかは、思っているほど単純ではない

この特例でよく問題になるのが、「同居していたと言えるかどうか」です。
 
住民票を実家に置いたまま、実際には別のところで暮らしていた。
二世帯住宅で建物の中は完全に分かれていて、玄関も別だった。
介護のために毎日通っていたが、寝泊まりは自分の家だった。
こうしたケースは、住民票だけで決まるわけではありません。
実際に生活の拠点がどこにあったかなどを見て判断します。
 
逆に、二世帯住宅で内部の行き来がなくても、建物の登記や利用状況などによっては特例を使えることもあります。
 
「親の近くに住んでいるから大丈夫」「住民票が同じだから大丈夫」と思い込まず、実際の住まい方を確認しておくことが大切です。
相続が起きてから「同居していたつもりだった」と説明しても、実態が伴っていなければ特例は使えません。
親が元気なうちに、今の住まい方で要件を満たすのかを確認しておく意味は大きいでしょう。
 

その場の税額だけで決めると、次の相続で負担が増えることもある

ここまでは同居していた弟さんが取得するケースの話でしたが、配偶者が取得する場合にも、小規模宅地等の特例を使うことができます。
また、配偶者が相続する場合には、「配偶者の税額軽減」によって相続税が大幅に軽減されることがあります。そのため、「今回は税金が少なくなるから、とりあえず配偶者名義に」と決めることがあります。
 
ただ、配偶者が自宅に住み続けるために、必ずしも自宅の所有権をすべて配偶者が相続する必要はありません。「配偶者居住権」を利用し、配偶者には住み続ける権利を確保しながら、建物や土地の所有権を子どもが相続する方法もあります。
配偶者居住権は、配偶者が亡くなると消滅し、その権利自体が次の相続の対象になるわけではありません。家族の状況によっては選択肢の一つになります。
 
一方、配偶者が自宅そのものや預金などを相続した場合、それらの財産は、配偶者が亡くなったときに再び相続の対象になります。
次の相続では配偶者の税額軽減が使えず、法定相続人の数が減れば、相続税の基礎控除も少なくなります。
最初の相続だけを見れば税金が少なくても、二回の相続を合わせると、かえって家族全体の負担が増えることがあります。
誰が相続するかを決めるときは、「今回いくら税金がかかるか」だけでなく、次に誰がその財産を引き継ぐのかまで考えることが大切です。
 
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相続が起きてから選べる道は、思っているより少ない

冒頭のご兄弟は、ご家族で話し合った結果、弟さんが自宅を相続し、お兄さんは別の財産を受け取る形になりました。
もしそのまま進めていたら、納税のために実家を売る話にもなりかねませんでした。
相続が起きてからできることは、実はそう多くありません。
誰が何を受け取るか、どう分けるか。事前に分かっていれば選べたはずの選択肢も、遺産分割や相続登記を終えた後では、簡単にはやり直せません。
 
実家の土地を誰が相続するのか。
家族で話し合うときには、気持ちや公平感だけでなく、税金の違いも一度確認しておく。
それが、後で「こんなはずではなかった」とならないための大切な準備です。

 
 
 

奥税理士 ワンコ税理士の損をしない相続
よみふぁみでは、理解するのが難しい「相続」をワンコ税理士こと、奥典久税理士の協力で、「相続」に関する疑問を一問一答で解説するコラムを連載しています。
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奥税理士 ワンコ税理士の損をしない相続
奥典久税理士事務所代表(大阪市北区)
相続税法の講師経験を活かし、相続税の申告や節税対策、遺言、家族信託、事業承継まで幅広く対応。

豊富な実績と丁寧な対応で多くの相談者から信頼を集めている。

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