【相続コラム】Q51 通知書の「1,000万円」を信じて、相続税はかからないと思っていた |ワンコ税理士の損をしない相続

2026.10.13 ● ワンコ税理士の損をしない相続

Vol.51
通知書の「1,000万円」を信じて、相続税はかからないと思っていた

「土地は1,000万円ですから、相続税はかからないと思っていました」

先日、実家の土地と預貯金を相続することになった方が、市役所から届いた固定資産税の納税通知書を持って来られました。土地は約180平方メートル。
通知書には、たしかに1,000万円と書かれています。
預貯金は1,500万円。相続人はご本人と弟さんの2人です。

 

相続税がかからないはずが・・・

相続税の基礎控除額は、相続人2人なら4,200万円です。
土地1,000万円と預貯金1,500万円を足しても2,500万円。
「これなら相続税はかからない」と考えておられました。
 
ところが、この計算には二つの間違いがありました。
一つは、通知書の見る欄が違うこと。もう一つは、固定資産税の評価額をそのまま相続税の計算に使えると思っていたことです。
 

 

一つ目の間違い 通知書の「課税標準額」を見ていた

固定資産税の通知書には、土地について「評価額(価格)」と「課税標準額」など、いくつかの金額が記載されています。
「課税標準額」は、固定資産税を計算するための金額です。
 
自宅の敷地には住宅用地の特例があり、住宅1戸につき200平方メートルまでの部分は、課税標準額が原則として価格の6分の1になります。
冒頭の土地は180平方メートル。本人が見ていた1,000万円は課税標準額でした。
 
同じ通知書の「評価額(価格)」を見ると6,000万円です。
「土地は1,000万円」と思っていたところ、固定資産税上の価格だけでも6,000万円だったのです。
相続の相談では、課税標準額を土地そのものの評価額だと思っている方は珍しくありません。
 

二つ目の間違い 固定資産税の評価額と相続税の評価額は別物

では、通知書の6,000万円を使えば相続税が計算できるのでしょうか。
 
これも違います。
固定資産税の評価額は、地価公示価格の7割程度を目安に評価されています。
一方、相続税で使う路線価は、地価公示価格などを基にした価格の8割程度を目途に定められています。
ただし、「固定資産税評価額より相続税評価額のほうが必ず高い」という意味ではありません。相続税では、路線価が付いている地域であれば、国税庁が道路ごとに定めた1平方メートル当たりの路線価を基に、土地の面積や形などを考慮して評価します。
 
冒頭の土地も、実際の路線価を基に計算すると、約6,500万円となりました。
預貯金1,500万円と合わせると約8,000万円です。
当初考えていた2,500万円とは大きく違います。
 
なお、自宅の土地には、一定の要件を満たせば330平方メートルまで評価額を80%減額できる「小規模宅地等の特例」があります。
この方は適用要件を満たしておらず、基礎控除額を超えたため、相続税の申告が必要になりました。
 

土地の値段は、一つではない

土地には、実際に売るときの価格、固定資産税を計算するための価格、相続税を計算するための価格があります。目的が違えば、金額も違います。
 
不動産会社から「7,000万円くらいで売れそうです」と言われても、その金額を相続税の申告に使うわけではありません。逆に、相続税評価額が6,500万円だからといって、6,500万円で売れるという意味でもありません。
 

 

使いにくい土地は、評価額が下がることがある

さらに、相続税の土地評価は、路線価に面積を掛けて終わりではありません。
間口が狭い、奥行きが長い、形がいびつといった土地は、その形状に応じて評価を調整します。
また、前面道路の幅が4メートル未満で、建築基準法上、将来建物を建て替えるときに敷地の一部を道路として提供しなければならない場合があります。
いわゆる「セットバック」です。
セットバックが必要な部分については、その部分を通常どおり評価した価額から70%相当額を控除して評価します。
 
こうした事情は、固定資産税の通知書だけを見ても分かりません。
家族にとっては何十年も見慣れた実家です。
「昔からこの道幅だったから」と、特別なこととは思わずに相続の手続きを進めてしまうことがあります。
 
冒頭の土地も、現地を確認すると前面道路の幅が4メートルに足りませんでした。
 
さらに調べると、建築基準法上のいわゆる42条2項道路に面しており、将来建て替える際にはセットバックが必要な土地でした。
その部分を確認したうえで、相続税の土地評価にも反映させます。
ただし、前の道が4メートル未満なら、すべての土地でセットバックによる評価減ができるわけではありません。道路の種類や、実際に後退が必要となる範囲を確認する必要があります。
 
固定資産税の納税通知書の課税標準額1,000万円は、相続税の土地評価額ではありません。
固定資産税の評価額6,000万円も、そのまま相続税の評価額にはなりません。
そして、路線価から計算した6,500万円も、土地の形や道路の状況によっては、そのまま利用すると評価が高くなる可能性がある金額です。
 

相続税の土地評価は相続が発生する前にしておく

自宅や所有している土地が、相続税ではどのくらいに評価されるのか。
 
相続が起きてから初めて調べるのではなく、親が元気なうちに一度確認しておく。
それが、相続税がかかるのか、納税資金をどのくらい準備しておくべきかを考えるための第一歩になります。
 
 
 

奥税理士 ワンコ税理士の損をしない相続
よみふぁみでは、理解するのが難しい「相続」をワンコ税理士こと、奥典久税理士の協力で、「相続」に関する疑問を一問一答で解説するコラムを連載しています。
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奥税理士 ワンコ税理士の損をしない相続
奥典久税理士事務所代表(大阪市北区)
相続税法の講師経験を活かし、相続税の申告や節税対策、遺言、家族信託、事業承継まで幅広く対応。

豊富な実績と丁寧な対応で多くの相談者から信頼を集めている。

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