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タイガー魔法瓶のヒット商品 「魔法のかまどごはん」の炊飯体験会に密着

新聞紙を薪代わりに熱々の「かまどご飯」?

タイガー魔法瓶のヒット商品 

「魔法のかまどごはん」の炊飯体験会に密着

 

本当に新聞紙を燃やすだけでおしいいご飯が炊けるの~?

タイガー魔法瓶が災害時でも炊きたてが食べられるように開発した「魔法のかまどごはん」の炊飯体験会が、阪神・淡路大震災から30年を迎えた2025年1月17日、神戸市内で開かれました。

電気やガスがなくても温かいご飯が味わえる――。震災を経験した人なら誰しも魅力に感じるのではないでしょうか。

しかし、燃料が新聞紙。40年間、新聞業界の末端で働いてきた当方には「たかが新聞紙の火力で炊飯なんて…」と正直、半信半疑でしたが、商品開発者の同社ソリューショングループ商品企画第2チーム主査、「魔法のかまどごはん」プロジェクトリーダーの村田勝則(まさのり)さん(55)は「されど新聞紙」を力説します。

たった一人で試作を繰り返して2年がかりで「魔法のかまどごはん」を開発したタイガー魔法瓶の村田勝則さん(左)と、阪神・淡路大震災で被災し、村田さんの試作現場に何度も立ち会って商品化を後押しした同社社長の菊池嘉聡さん

 

「火力だけなら確かに薪の方が強いです。しかし、炊飯に欠かせないのは誰でも簡単に火力を調整できること。それには新聞紙が最適なんです」と強調します。炊飯に必要な火力は「はじめチョロチョロ、中ぱっぱ」。最初は弱火、途中から強火です。村田さんは「それには誰が燃やしても同じ火力になることが前提です」と言います。新聞紙はサイズと紙質は変わらず、1枚が燃えた時の火力はいつも同じです。「1枚分を1つの燃焼単位とし、燃やす間隔を変えれば簡単に火力が調整できるのが新聞紙の最大の利点です」と解説します。

新聞紙を薪代わりにするため、炊飯前に準備をします。①新聞紙一面大を対角線上に持って二つ折りにする②左右2方向から両方の手のひらの中に収めるようにグチャグチャと握っていく③棒状になった新聞紙を半分に折って軽く絞り長さ15㎝大になれば完成。炊飯に必要な個数を作っておく

 

 

例えば、4合の炊飯に必要な新聞紙は20枚。1枚ずつ順番に燃やしていきます。炊き始めの「新聞紙7枚目まで」は1分30秒間隔(はじめチョロチョロ)で燃やし、中ぱっぱの「同8~19枚目」は1分間隔(中ぱっぱ)に短めて、火力をアップします。10分後に最後の1枚を蒸らし用として入れたあと、5分待てば炊きあがりです。

「魔法のかまどごはん」誕生は、村田さんのもったいない精神が原動力になっていました。家電各社には、顧客の保守サービスのために全商品を一定期間保有する業界のルールがあります。通常、炊飯器で6年間。同社ではさらに長く10年間、保有していました。

当時、保有部品を管理していた村田さんは考えました。最終的に廃棄するしかない炊飯器の内なべを捨てずに有効活用する方法はないものか。学生時代、バイト先のキャンプ場で新聞紙を燃料に炊飯をした経験を思い出し、電気もガスも使わない「かまど式の炊飯器」作りを思い立ちました。

 

試作を繰り返していた時期はコロナ禍だったので、本社内の作業場のほか、在宅勤務中は自宅の庭を工房にして作業を繰り返しました

 

 

 

2021年6月に社内公募制度に提案、翌年4月に見事に採用されて、社内の一室を工房にして、たった独りで本格的に試作を始めました。最大のテーマは「新聞紙が燃え残らずに最後まで燃やすには、どんな形状のかまどにすればよいか」でした。最初は市販の植木鉢に燃料を入れる穴を開けて始めましたがうまくいきません。その後はプラスティックバケツにセメントを流し込んで型取りをして乾燥させたものを使いました。穴も左右に2つ作って、互い違いに新聞紙を入れて順に燃やす方法を編み出しました。工房はいつしか「村田部屋」と呼ばれるようになりました。阪神・淡路大震災で被災経験のある同社社長の菊池嘉聡さん(60)も「村田部屋」に足を運び、試食に付き合うなど側面から応援しました。

試行錯誤の末、6か月がかりで完成にこぎつけました。試作回数は実に70回以上に上り、「魔法のかまどごはん」と命名し、2023年9月1日の防災の日から予約販売を開始しました。販売価格を1台1万9800円にし、販売は自社サイトに限定しましたが、年間3000台という目標は発売前にクリア。発売1年後の2024年10月には年間目標の4倍を超える1万4000台が売れるヒット商品になりました

「魔法のかまどごはん」を使って炊飯体験がスタート。もちろん燃料は新聞紙だけです。4合の炊飯には20回、新聞紙を燃やします。表のように時間を守って次々、点火を続けます

必要な物は作業用の軍手、市販の着火ライター、キッチンタイマー。まず、両手に軍手をし、かまどの右穴に新聞紙を入れて着火ラーターで点火をします

キッチンタイマーとにらめっこしながら、時間が来たら次の新聞紙を別の穴に入れて燃やします。これの繰り返しです

かまどの後ろから炎が立ち上り、新聞紙の火力の強さがわかります

 

炊飯体験会の会場では4合を炊きました。新聞を丸めて準備をし、かまどの横にはキッチンタイマーを用意、決められた時間に左右交互に新聞紙を入れて着火していきます。タイマーとにらめっこしながらの作業は遊び心もあって、子どもと一緒にすると楽しそうです。かまどの隙間から炎が揺らめきます。15分間の蒸らしを終えて出来上がりです。

15分間の蒸らしを終えてフタをとれば、蒸気とともにご飯のいい香りが立ち込めます

 

釜のフタを取ると一気に湯気が立ち上り、視界を遮ります。表面には釜底から上がってきた泡の通り道の「カニ穴」が見てとれます。ふっくらと炊き上ったご飯をおむすびにしてゴマ塩だけでいただきました。熱々でもっちり。粒立ったご飯はそのままでも甘みがあって、何個でも食べられそうです。燃料としての新聞紙の可能性の最大限引き出して、新聞紙の新たな重要性を証明してくださった村田さん、タイガー魔法瓶さんに感謝です。味も仕組みも、まさに「魔法のかまどごはん」でした。

 

「魔法のかまどごはん」!炊き上りまでのショート動画がコチラ!👇

ぜひ、ご覧ください。本当においしかったですよ

 

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