【今年86歳のプロゴルファー】59歳で臨んだ合格率3%の超難関プロテスト 古市忠夫プロの知られざる“突破劇”の全貌はこれだ!

いつも記者ブログをご覧いただきありがとうごいざいます。
記者の大西秀雅です。
読売ライフ8月号でご紹介した、国内屈指の年長プロゴルファー、古市忠夫さん。1940年(昭和15年)生まれで、今年9月22日で御年86歳。
古市さんは2000年、20代の選手に交じり、還暦目前の59歳で超難関のプロテストに挑戦しました。
合格率3%という難問を、いかにして“突破”できたのかをご紹介いたしましょう。
ホームコース「大神戸ゴルフ倶楽部」摩耶コース(6615ヤード、パー72)を75のエージシュートでホールアウト
まず、今回の取材をお願いするために古市プロに連絡を入れると、「いいですよ。●月▲日ならホームコースの大神戸ゴルフ倶楽部でラウンドをしますから、ぜひお越しください」と快諾してくださったので、コースにお邪魔しました。

大神戸ゴルフ倶楽部は、1966年(昭和41年)開場の歴史あるゴルフ場です。
神戸市西区の山岳地帯に広がる36ホールは、打ち下ろしや打ち上げなど高低差を生かしたスリリングな挑戦ができ、ベテランから初心者まで幅広く楽しめる本格的なチャンピオンコースです。
クラブハウスからコースに出ると絵画のように美しい緑豊かなフェアウェイが広がっています。
「お待たせしました」。
古市さんがプレーを終えてクラブハウスに戻ってきました。
「前半の9ホールはバーディーが2つ取れてパープレイ(スコア36)、後半は少し崩れて39、トータル75の3オーバー。6615ヤードもあるレギュラーティーから年齢(85)を下回るエージシュートを達成できたので上出来、上出来。今日もゴルフができて、ホンマに感謝やね」と満面の笑みをたたえます。
震災で得た「周囲に感謝する気持ち」がすっかり定着。
古市さんの口からは、誌面で紹介したように愚痴や泣き言は一切でません。アッパレです。
緑まぶしいティーイングエリアで単独インタビュー
ラウンド終了後、緑鮮やかな1番ホールのティーイングエリアでインタビューをさせていただきました。

30歳でゴルフを始め、39歳で入会した大神戸ゴルフ倶楽部で通算10回もクラチャン(クラブチャンピオン)に輝くという、まさに「ゴルフ侍」だった古市さん。
当時は神戸市長田区の鷹取商店街で写真店を経営していましたが、1995年に襲った阪神・淡路大震災で商店街が火の海になり、一面焼け野原に。
古市さんの自宅兼店舗も跡形もなく焼失、「茫然自失のなか気力を奮い立たせて自治会長として地域の復興に走り回っていました」といいます。
友人の一言でプロテスト受験
そんな古市さんが、プロ顔負けのゴルフの腕前だったことは周知の事実。友人から「プロゴルファーのテストを受けてみては」と背中を押されたのがプロ入りのきっかけでした。
「ゴルフ道具は自宅から離れた駐車場に止めていた車のトランクに入っていたので無事でしたが、震災復興でてんてこ舞いの忙しさでしたから満足な練習なんてできません。でも1回だけという条件で家族に許しを得て、テストを受けさせてもらいました。はたから見たら、ゴルフ部上がりの若手に交じって、59歳のおっちゃんが挑戦するんですから勝ち目がない無謀なチャレンジに見えて当然です。でも、当時の私は、通るとも思っていませんでしたが、だからといって落ちるとも思っていませんでした」。
合格した前年のプロテスト こんなアンラッキーがあるの?
実は最初に受験したのは、プロテストに合格(2000年)した前年の99年です。
古市さんは2度目の挑戦で難関を突破したのです。
ここで、当時のプロテストの仕組みを古市さんの教えてもらいました。
「当時の受験者数は約1800人。まず3月に2日間の1次テストが行われ、それを通過すると4月の2次テスト(2日間)に進みます。勝ち残った選手が5月の3次テスト(同)に進出、そこをパスすれば7月の4次テスト(3日間)へ。最終テストは9月に4日間で開催され、合計13日間、最終日の上位50位タイまでの選手が晴れてプロ入りとなります」。
話を聞くだけでも、気が遠くなりますよね。
「実力もなく、運よくプロ入りできた」なんていう偶然が入り込む余地なんてありえない話です。
そんな、超難関の狭き門。初回の99年は1次、2次は順調に勝ち上がり、迎えた3次テストです。
「会場は三重県のゴルフ場でした。忘れもしません。1番から4番まではパーで上がり、5番ホールでボギー。そして6番のロングホールです。
ティーショットはフェアウエイに落下しました。ティーイングエリアからボールが見えたので2打地点付近に行ってみると、あろうことか私のボールがないんです。
いくら探しても見つかりません。仕方なく、元の場所に戻って打ち直しをして、6番ロングホール(規定打数5)は8になって、2日間のスコアが4オーバー。
予選通過のカットラインが3オーバーだったので、1打及ばず不合格になりました。あるはずのボールが見つからず、1打足らずで無念の涙を飲む結果です。
ゴルフ歴30年でこんな経験は初めてでした」。
さて、ここで問題です。
もし、皆さんが古市さんの立場ならどんなことを思ったでしょうか?
記者もインタビュー中、同じ質問を古市さんにされました。
月イチゴルファーの端くれの記者、ことの大小は違えど、苦い経験は数知れず。
「そりゃ、悔やんでも悔やんでも悔やみきれないでしょう。その紛失球がなければ、3次テストはパスしているんですから。落ち込みまくるでしょうね」と一気に話すと、
これぞ、古市流、感謝力の真骨頂
「私は全く違うんですよ」とニッコリ。
ここからが、古市流の難関試験の“突破術”です。
「帰宅する車中でこう考えました。私はゴルフをしてきて30年、こんなアンラッキーに遭ったのは初めて。
いわば『30年に一度のアンラッキー』。
こんな不幸があるのなら、その翌年には必ず『30年に一度のラッキー』が来るという思いが心の底から湧いてきたんです。
その時にそんな前向きなことは普通、考えないでしょう。
自宅に帰って、嫁さんに同じこと言ったら、エライ怒られましたね(苦笑)。
『お父さん、1回しかテストを受けへんって言ってたやないの』。
そりゃそうですよね。テストを勝ち上がるということは、試合にかかる交通費や滞在費、プレー費、エントリー費がどんどんかさみ、当時のわが家にとっては途方もない費用がのしかかってくるんですから。
嫁さんのホンネは、プロテストなんて早く落ちて、警備員の仕事についてほしかったはずです。それでも、私は『30年に1度のアンラッキーの後には30年に1度のラッキーは来る』と言って、怒っている嫁さんに来る日も来る日も『頼むから受けさせてくれ』と拝み倒したんです。半年間は口もきいてもらえませんでしたが、嫁さんもしぶしぶ了承してくれました」
吉報に最愛の妻はただただ泣くばかり
そして翌年です。

「試合の前に知り合いが壮行会を開いてくれて、その席上、パターをくれたんです。それがこれです。
私も何を思ったのか、使い慣れたパターをやめて、もらったパターを試合で使ったらこれが入りまくりなんです(笑)。特に4次テストの3日間と最終テストの4か間は、10m以上のロングパットが面白いようにポンポン入りました。7日間の平均パット数は23パット。1パットが18ホール中13回という驚異的な結果でした。ラッキーの連続ですわ。
震災前なら前年のプロテストの結果にボヤキ倒して2回目は受けてないはず。
震災後は感謝力が芽生えてますから、ものすごく前向きに考えられるようになったんです。自分でも不思議です。
『通ったぞー』と嫁さんに電話を入れたら、受話器から泣き声だけがきこえるんです。嫁さんが喜んでくれたのが一番、うれしかったですね」
いかがでしたか、古市流の難関テストの突破ストーリーは。
「感謝をする気持ちはその人の心を大きく、美しく、若く、清く、そして強くします。プロテストに合格したあと、赤井英和さんと田中好子さんが夫婦役を演じて、私の半生を描いてくださった映画「ありがとう」が上映されたり、メジャー通算15勝の世界的なプロゴルファー、タイガーウッズ選手と対戦できたり、たくさんの本を書かせていただいたり、と私にとって奇跡のような出来事が次々起こりました。
こうした経験から実感するのは、奇跡を起こす方程式は『才能×努力×感謝力』、特に感謝力が大切だなぁとひしひしと感じています」と古市さん。
感謝の気持ちを持ち続けるには、声に出して「ありがとう」と言う癖をつけるといいそうですよ。
月イチゴルファーの記者も頑張って感謝力を身に付けたいと思います。
古市さんは、愛用のブリジストンのゴルフボールにも「ありがとう」の文字をプリントして使っています
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記者 <大西秀雅> 1962年(昭和37年)生まれ。長らく現場を離れていましたが、2年前から記者に復帰。60の手習いで始めたYouTube用カメラを持って取材に奮闘中。趣味は毎朝3時起きの早朝ランニング。苦手なものはキュウリとウインカーを出さず曲がるドライバー。 |
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