ネコ坊主の「ネコさんから人間さんへ今日の一言」Vol.8

ネコ坊主こと、専念寺住職の藪本正啓です。
「置かれた場所で咲けないなら、環境を変えなさい。根っこが腐る前に。」
この言葉を目にしたとき、胸の奥にズシンと重いものが落ちたような感覚がありました。私は今、お寺の住職をしています。家を継ぐのが当然、地域のために尽くして当然——そんな空気の中で育ち、気がつけば自分の心よりも「役割」を優先して生きてきたように思います。
しかし、時代は変わりました。檀家は減り、法事や葬儀の数も少なくなりました。SNSやネットを通じて誰もが情報を得られるようになった今、特に若い世代は、寺に何を求めているのかすら分からないこともあります。そうした現実を前に、私は次第に虚しさを感じるようになっていきました。「自分は、誰のために、何のためにここにいるのだろう」と。
日々、お経をあげ、法務をこなす。外から見れば「咲いている」ように見えるかもしれません。でも、心の中ではしおれていました。朝起きるのがつらく、行事の準備も億劫に感じる。妻との会話も減り、笑顔すら消えてしまっていたのです。まさに、根っこが腐りかけていた状態でした。
そんな時に、この言葉が心に浮かびました。「置かれた場所で咲けないなら、環境を変えなさい。」正直、最初は抵抗がありました。「住職がそんなことを言ってどうする」と自分に言い聞かせてもいました。でも、よく考えてみると、 環境を変えることは「逃げ」ではなく、「自分を守ること」なのだと気づいたのです。自分を守れなければ、人を救うことなど到底できません。
最近は、自分が本当にやりたいことや、どう生きていきたいのかを少しずつ見つめ直すようにしています。お寺という場所を捨てるわけではありません。むしろ、その中での 自分の在り方、人との関わり方を、自分の心に正直になれる形へと変えていきたい のです。小さな一歩かもしれませんが、それが自分の根を守ることにつながると信じています。
環境を変えることは、決して簡単ではありません。でも、心が腐ってしまってからでは遅いのです。どうかあなたの根っこも、腐る前に、やさしく守ってあげてください。

