【相続コラム】Q遺言に添える「最後の手紙」 家族への思いは、どう書けば伝わる? |ワンコ税理士の損をしない相続Vol.46

2026.08.17 ● ワンコ税理士の損をしない相続

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Vol.46
遺言に添える「最後の手紙」  家族への思いは、どう書けば伝わる?

「自宅は長男に、預金は長女に引き継いでもらいたい。でも、受け取る財産に差があれば、子どもたちはどう思うだろう」

遺言書を作ろうとすると、財産の分け方だけでなく、その理由をどう伝えるかで悩む方は少なくありません。親には親なりの事情があっても、遺言書に結論だけが書かれていれば、残された家族には、その考えまでは分からないからです。

 

家族への思いや、財産の分け方を決めた理由を書き添えられる「付言事項」

遺言書に家族への思いや、財産の分け方を決めた理由を書き添えることがあります。これを一般に「付言事項」といいます。
 
付言事項には決まった書式がありません。
家族への感謝や財産の分け方を決めた事情などを、自分の言葉で書くことができます。
 
ただし、付言事項は、原則として法的効力を持ちません。
「兄弟で仲良くしてほしい」「実家は売らずに守ってほしい」と書いても、その言葉だけで相続人を法的に拘束することはできません。
また、「この分け方に不満を言わないでほしい」と書いても、相続人が遺留分侵害額を請求する権利までなくなるわけではありません。
 
誰にどの財産を引き継がせるのかは、法律で定められた方式に従い、遺言の本文に明確に記載する必要があります。
付言事項は、財産の分け方を決める部分ではなく、その背景にある思いを伝えるための文章です。
それでも、付言事項には大切な役割があります。
 
たとえば、自宅を長男に、預金を長女に相続させる遺言が残されていたとします。
長女が受け取る財産の方が少なければ、「なぜ兄だけが実家をもらうのか」「自分は大切にされていなかったのか」と感じるかもしれません。
そこに、「長男には長年、実家の管理や通院の付き添いをしてもらった」「長女には住宅購入の際に資金を援助している」「どちらにも同じように感謝している」と書かれていれば、すべてに納得できなくても、親の考えを理解する手がかりになります。
 
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付言事項は、生前に聞いていた考えを最後に確認する手紙になる

理由を書くときは、特定の家族を責めるような内容にしないことが大切です。
「次男は何もしてくれなかった」「長女にはさんざん迷惑をかけられた」と書けば、亡くなった後も、その言葉だけが家族の心に残ります。家族への思いを伝えるはずの付言事項が、新たな対立の原因になってしまいます。
 
財産に差をつける理由を書くのであれば、誰かを非難するのではなく、「自宅を管理してきた」「家業を引き継ぐ」「生前に住宅資金を援助した」など、判断のもとになった事情を具体的に書く方が伝わります。
 
事実関係の確認も必要です。
「以前、多額の援助をした」とだけ書いても、本人と家族で金額や目的についての認識が違えば、かえって疑問が生まれます。通帳や契約書などを確認し、曖昧な記憶を断定的に書かないことも重要です。
 
そして、付言事項だけで思いを伝えようとしないことです。
生前に財産の話を一度もせず、亡くなった後に初めて理由を示せば、家族には「一方的に決められた」「今さら反論もできない」と受け取られることがあります。
 
反対に、元気なうちから「実家は管理を続けてくれる子に任せたい」「会社の株式は事業を継ぐ子にまとめたい」と話していれば、付言事項は、生前に聞いていた考えを最後に確認する文章になります。

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家族で話し合ったとしても遺言書は必要

もちろん、家族で話し合ったからといって、遺言書が不要になるわけではありません。
遺言書がなければ、原則として相続人全員で遺産分割協議を行い、預金の払戻しや不動産の名義変更を進めることになります。そのためには、相続人全員が財産の分け方に合意し、自らの意思で手続に参加しなければなりません。
 
相続人が遠方や海外に住んでいれば、連絡や書類のやり取りに時間がかかります。認知症などにより判断能力が不十分な相続人がいる場合は、そのまま遺産分割協議を進めることはできず、成年後見制度の利用などが必要になります。
相続人に未成年者がいる場合も注意が必要です。親権者も共同相続人であるなど、親権者と未成年者の利益が対立するときは、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てなければなりません。
 

現状をふまえ、感謝と理由を率直に、誤解のない表現で残す

家族の気持ちが一致していることと、相続手続を円滑に進められることは、別の問題なのです。
付言事項は、一度書けば終わりではありません。介護の状況、家族関係、財産の内容は時間とともに変わります。遺言書を見直す際には、付言事項に書いた理由が現在の状況と合っているかも確認します。古い事情のまま残せば、かえって家族を戸惑わせるからです。
長い文章にする必要はありません。大切なのは、きれいな言葉を並べることではなく、感謝と理由を率直に、誤解のない表現で残すことです。

遺言書は、家族で話し合った内容を、実行できる形にして残すものです。付言事項は、その結論だけでは伝わらない感謝や理由を書き添えるものです。
元気なうちに家族と話し、遺言書で財産の承継先を明確にし、最後に付言事項で自分の言葉を添える。その積み重ねが、残された家族の迷いや誤解を少なくすることにつながります。

 
 
 

奥税理士 ワンコ税理士の損をしない相続
よみふぁみでは、理解するのが難しい「相続」をワンコ税理士こと、奥典久税理士の協力で、「相続」に関する疑問を一問一答で解説するコラムを連載しています。
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奥税理士 ワンコ税理士の損をしない相続
奥典久税理士事務所代表(大阪市北区)
相続税法の講師経験を活かし、相続税の申告や節税対策、遺言、家族信託、事業承継まで幅広く対応。

豊富な実績と丁寧な対応で多くの相談者から信頼を集めている。

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