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山本ゆりさん連載コラムseason2の第二回目『鶏肉の思い出』

2021.03.18 コラム 人気料理家レシピ 山本ゆりさんのレシピ

『山本ゆり 鶏肉』

この検索ワードでブログに来てくださる方がとても多い。今までのレシピ本、シリーズ1~7のいずれもランキング1位は鶏肉というぐらい、鶏肉は人気食材であり、私の中で圧倒的にレシピが多い。煮ても焼いても揚げても蒸してもおいしい鶏肉。愛してやまない鶏肉。豚肉、鶏肉、牛肉のうち一生どれか1つしか食べられないとしたら‥‥豚肉。(なんやねん)いやこれ、今だに答えが出ないんですよね。焼肉も捨てがたいけど、豚バラ肉だけは人生から消せない。でも、からあげが一生食べられないなんて耐えられない…豚バラを選んでもからあげだけは食べていいことな!

こんな鶏肉大好き人間だが、幼いころ家での食事に限っては、そこまで好きではなかった。というのも、うちでは鶏肉といえば安いむね肉しかほとんど出なかったのだ。それを祖母が腕によりをかけて調理。基本的に買ってきたお肉はそのまま冷凍庫にいれるので、パックのままガッチガチに凍っている。まずは自然に解凍し、フォークで穴をあける。砂糖、塩、水をもみ込み、そのまま10分ほど寝かせることで、しっとり仕上げ・・・

なんておばあちゃんの知恵袋的なことはするわけがなく、解凍もせずそのままフライパンにゴン!とイン。ひどい時には、ガチガチなまま魚焼きグリルにいれていた。焼けるか!!と思うが、祖母の頭に焼けるか焼けないかの選択肢はない。焼くか焼かないかだ。高温で表面を一気に焼き上げるのに適した網で、じっくりじっくり時間をかけてカチカチのむね肉を焼いていく。これが意外とジューシーに仕上がる・・・なんてことあるわけもなく、パッッッッッサパサ。表面をめちゃめちゃ焦がして焼き上げる。むね肉の特徴を最大限に尊重し、あなたはパサついてていいのよ、それは欠点じゃないの個性よ、と言わんばかりにガンガンに強火で焼き続け、かろうじて持ち合わせている脂をすべて流出。パサついてるどころかカッスカスに仕上げてきていた。とりあえず祖母は魚焼きグリルをレンジ並に活用してたわ。酷使しすぎて最終的に崩壊してた。以下閲覧注意画像。

一般家庭の台所の図じゃないやろ。(黒い塊は餅の模様)

このパサパサで歯に挟まりそうな鶏肉の状態を、姉と二人で「シャシャシャ」と呼んでいて。「今日のからあげめっちゃシャシャシャ!」とか、「今日のからあげもシャシャシャやわ~」とか、「今日のからあげマジでシャシャシャやねんけど」とか(例からあげばっかりか)事あるごとに使っていた。外食でも、むね肉だったら「はいシャシャシャ」。スーパーで買った焼き鳥も、焼きすぎていたら「うーわ。シャシャシャや・・・」。そして私たちは皮に執着した。唯一のジューシーな部分、皮。シャシャシャ砂漠のオアシス、皮。どれだけ焼かれても揚げられてもブルブルを保っている皮。むね肉にはあんまりついてないけれど、少しでもあれば大満足。皮の部分は先にはがし、大事にお皿の端によせ、最後の1口に宝物のように味わっていました。・・・・クチャクチャ。(宝物汚いわ)

そもそもの話、お肉というのは部位別に売られていることさえ私たち家族は知らなかった。いや思いっきりパックに書いてるやろ!て話やけども、「むね」とか「もも」とか気にしたことがなかった。ただの名前ぐらいの「むね…ふーん」「もも…へー」「ブラジル産…ほー」ぐらいの感情で、部位によって脂の量や食感が違うなど考えたこともなかった。なのでごくたまに祖母がもも肉でからあげを作ろうもんなら、食べた瞬間大絶賛。

「今日のからあげシャシャシャじゃない!」「お店みたい!」「おばあちゃん次からこのやり方にして!」と口から泡ふいてまくしたて、きよこも「そうか~?いつもと一緒やで」とまんざらでもない様子。この味を、この感覚をどうか忘れないで!と、次にからあげを作る際には「前と同じように作ってや!!この前のあのジューシーなやつ!!」と念を押し、「よっしゃ」と答える祖母。
前回と同じように切り、同じように下味をつけ、衣をつけ、同じようにこんがり揚げる。
期待で胸が膨らむ。おいしそう・・・・!できあがったからあげをひと口頬張る。

・・・・・

!!!

シャシャシャーーーーー!!!

落胆。

シャシャシャやないか。どういうことやねん。またシャシャッとるやないかいと。

『きよこ、これはレシピの問題やない、部位や』

今なら祖母に教えてあげられるけれども、私たちは「揚げすぎちゃう?」「切り方ちゃう?」「お店のはもっとでっかくない?」「衣が違うんちゃう?」など無知丸出しで原因を探りながら、日々シャシャシャのお肉をぐわしぐわしと頬張っていた。

今、どんなパサついたお肉やカスカスの魚を食べても基本的に美味しいと感じられるのは祖母のおかげだと思う。お肉に限らず、晩ご飯の品数でもなんでも、ベースが低いとあとはあがるしかない。何を食べても美味しい。ある意味では食育大成功だと言えよう。

 

山本ゆりさんに用意していただいた
オリジナル最新レシピを紹介

 

山本ゆり プロフィール
料理コラムニスト。大阪生まれ&在住。著書「syunkonカフェごはん」シリーズ(宝島社刊)など著書は累計約700万部。最新刊「syunkonカフェごはん7 この材料とこの手間で「うそやん」というほどおいしいレシピ」ほか、「syunkonカフェ どこにでもある素材でだれでもできるレシピを一冊にまとめた「作る気になる」本」(扶桑社刊)など。新刊エッセイ「syunkon日記 おしゃべりな人見知り」(扶桑社)が3月30日に発売決定
Twitter:syunkon0507
instagram:yamamoto0507

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