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Column

料理&コラム

井上かなえ(かな姐)さんのコラム&レシピ3か月連載season2-2

【子育てコーチング】その2

転機が訪れたのは下の娘が3歳になり、
幼稚園に入園した頃だった。

ママ友に誘われて、
子どもたちが幼稚園や学校へ行っている時間に
子育てコーチングの勉強会に参加するようになった。

コーチングとは、
ビジネスの場では「目標を達成するための社員教育の手法」としてよく取り入れられているのだが、その頃の私は全く予備知識なく、
ただ子育て中の悩みやストレスを誰かに相談したくて、
わらにでもすがる思いで参加したのだった。

まずコーチングとは何か。
コーチングは相手の話を聞くことから始まる。
自分は子どもの話を普段、どんな態度で、どんな聞き方をしているのかを振り返ってみる、
というところから始まった。

その頃の私は3人の子どもたちそれぞれの話を本当の意味では聞いていることはなかったと知る。

「聞く」とは

相手の目を見て、
話し方を見て、
声のトーンや仕草、
表情など現れるすべてのことを観察し、
何を伝えようとしているのかをまさに全身を使って感じ「聴く」。

相槌をうち、
時に効果的な質問を挟むことにより相手が話を続けやすいように促す。
その的確な質問により、
相手が自分の内側に持っている答えを引き出させてあげるようにする、
それがコーチングなのだ。

コーチングでは相手にただ正解を教えるのではない。
あくまでも答えは相手の口から出てくるように、
こちらからは質問だけで導く。

今までの私はそんなことはしたことがなかった。
自分が親であるというただそれだけの理由で自分が王様であるかのように
子どもたちに命令しかしていなかった。

子どもは自分の分身でもなければ所有物でもないのに。

「勉強しなさい!」
「片付けなさい!」
「静かに!」
「うるさい!」
「寝る時間!」。

正しいこと、良かれと思って言っていることであったとしても、
命令されていやいやさせられる行動は中身が伴っていないということは、
これを読んでいらっしゃる方すべてがご存じだろう。

けれど、
自らの頭で考え、導き出した答えならば、それは行動を伴う。

テレビを見てダラダラしている子どもに「勉強しなさい!」と親が言わなくても、
子どもが自ら進んで勉強したくなるような質問をする、
これがコーチングだ。

どう聞くか。
どう質問するか。
会話の着地点はどこか。
目標はどこか。
そこへどう導くか。

それは我が子を自分とは別の一個人として尊重し、
一人の立派な人間として扱うことだった。

学校から帰ってくるとやることをやらずに遊んでしまい、
結局晩ご飯の時間になってもやるべきことが何一つ終わらない長女に、
宿題をすることやピアノの練習をすることをどうやって思い出させるか。
これは朝、学校へ行く前に、
今日は帰ってきたら何をやる予定かを長女に質問し、答えを聞き、
さらにそれらの事柄をするためにはどうしたらいいのかを質問してみた。

長女は自分で予定表を書くことや時計を見ながら行動すること、
宿題が早く終わったら、ピアノの練習がたくさんできたら何をしたいか(母さんとお菓子を作りたい!など)を話すことで、実際にそのように行動することができた。

片づけが苦手だった次女には、
部屋が片付いたらやりたいことを尋ねてみた。

友達を呼んでお菓子パーティをしたい!と自分で答えた次女には、
どうやって片付けるかを具体的に考えられるように質問をした。
「どこから最初に片付ける?」
「片付けている途中で迷ったり困ったりしたらどうする?」
「それはいつから始める?」。

私にとっては、それはまさに目からうろこだった。
勉強しなさいって言わなくても勉強がしたくなる?
片付けしなさいって言わなくても自分から進んで片づけをしてくれる?
そんな魔法みたいなことが、

本当にあった!

うまくいかないことがあった日や怒り過ぎた日には、
お風呂に入っている時に幼い娘たちと【今日嬉しかったこと】を発表し合うのが楽しかった。

質問を投げかけると娘たちは喜んで答えを懸命に探してくれた。

【昨年の自分の成果】【今年の目標】を言い合ったりすることは、
娘たちが随分大きくなってからもずっと続いた習慣にもなった。
「その目標に到達するために、どんなことができるか、3つ挙げてみて」と質問すると、娘たちは喜んで考えてくれた。

3人の子どもたちを育てていく20数年の間に、それぞれに反抗期はあったし、
すべてが完璧に物事が進んだわけでは決してなかった(当たり前だが)。
けれど一つ言えるのは、
子どもたちもいつまでも3歳の子どもではないということだ。

ずっと7歳ではないし、

ずっと12歳のままでもない。

日々成長し続けている。

いつまでもしっかりと手をつなぎ、通りを渡るときに左右を確認して、今車が来ていないかどうか、今通りを渡っていいかどうかを母さんがいちいち教えてやれるわけではない。
子どもが親から手を離そうともがいているのを、何が何でも離してなるものかと上からぎゅっと握りしめてはいないだろうか。

子どもを信じることは時には難しい。
間違ったほうへ進んでいきそうな時は、
正しい道へと導いてやらねばならないときもある。
けれど、
その正しい道っていうのは私が思ったことで、
子どもは決してそうは思っていないことなのかもしれないということを忘れてはいけない。

それにはまずは「聴く」ことから始めよう。

 

 

次回は確実に離婚案件と思われた夫と、
結婚生活が長続きした理由を書きます。

来月(1月下旬公開)に続く・・・

 

よみファクッキング1月のレシピ

【井上かなえ(かな姐)さん人気レシピ】

材料や作り方は下記リンク先の
よみファクッキングに掲載しています。

◆すりおろしレンコンの落とし焼き

◆レンコンと鶏ムネ肉の具沢山おかずスープ

 

井上かなえ(かな姐)さんプロフィール

料理ブロガー。料理家。兵庫県在住。
2005年にスタートした3人の子どもたちのリアルな日常と日々のごはんを綴ったブログ「母ちゃんちの晩御飯とどたばた日記」はライブドアブログで2018年に殿堂入りし、レジェンドブログに。
最新刊「てんきち母ちゃんのらくべん!レンチンだけ、あるものだけ、実働3分!」(ダイアモンド社)など著書多数。
東京、神戸での料理教室開催、雑誌、TV、食品メーカーのレシピ考案などでも活躍中。

2020/12/24発売のお料理単行本

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