【相続コラム】Q 「毎年110万円までなら大丈夫」と思っていませんか?  贈与で見落としやすいこと ワンコ税理士の損をしない相続Vol.43

2026.07.13 ワンコ税理士の損をしない相続

Vol.43
「毎年110万円までなら大丈夫」と思っていませんか? 贈与で見落としやすいこと

「子どもや孫に毎年110万円までなら、贈与税はかからない」。
相続対策の話になると、この言葉を聞いたことがある方は多いと思います。

たしかに、暦年課税の贈与税には年間110万円の基礎控除があります。
1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下であれば、原則として贈与税の申告は不要です。

110万円は「もらった人」ごとに判定する

ここで注意したいのは、110万円は「もらった人」ごとに判定するという点です。
父と祖母から同じ年に贈与を受けた場合、父からの贈与だけ、祖母からの贈与だけで判断するのではありません。その人が1年間にもらった財産の合計額で考えます。
また、110万円という金額は、あくまで贈与税の基礎控除です。
「110万円以内なら、どんな渡し方でも安全」という意味ではありません。

 

大切なのは、本当に贈与が成立しているか

贈与は、あげる人が「あげます」と意思表示し、もらう人が「もらいます」と受け入れることで成立します。親が子ども名義の口座を作り、子どもに知らせないままお金を入れているだけでは、贈与として認められないことがあります。
この場合、口座の名義は子どもでも、実際には親のお金だと判断されることがあります。いわゆる「名義預金」の問題です。名義預金と見られやすいのは、通帳やキャッシュカード、印鑑を親が管理している場合です。子どもが口座の存在を知らない、自由に使えない、入出金の判断も親がしている――このような状態では、「子どもに渡した」とは言いにくくなります。

 

幼い子どもには贈与できない?

では、幼児や小学生のように、自分で十分に判断できない年齢の子どもには贈与できないのでしょうか。そうではありません。
未成年の子どもに贈与する場合でも、親権者である親が内容を把握し、子どものために管理する形を整えれば、贈与として認められる場合はあります。
たとえば、祖父母から孫へ贈与する場合に、親が内容を確認し、孫名義の口座で管理する方法です。
ただし、ここでも大事なのは実態です。祖父母が通帳を持ち続け、親も子どももお金の存在を把握していない状態では、名義預金と判断されやすくなります。

渡した後の管理を工夫できる

「子どもや孫にお金を渡すと、勝手に使ってしまうのではないか」と心配される方もいます。その場合、単に現金を渡すのではなく、使い道や管理方法を工夫することも考えられます。生命保険やNISAを使い、将来の備えや資産形成につなげる方法もあります。
ただし、生命保険やNISAを使えば、贈与の問題がなくなるわけではありません。
あくまで、贈与した後のお金をどう管理し、将来に残すかという方法の一つです。
贈与として成立しているか、誰が資金を出し、誰が管理しているかは、変わらず重要です。

 

毎年同じ金額を渡すときの注意

毎年同じ金額を渡す場合にも注意が必要です。
毎年100万円ずつ贈与すること自体が、直ちに問題になるわけではありません。
ただし、最初から「5年間で合計500万円を渡す」と決めていた場合には、毎年の贈与ではなく、まとまった金額を受け取る権利の贈与と見られることがあります。
大切なのは、毎年その都度、贈与する意思と受け取る意思を確認することです。
贈与契約書を作る、振込で記録を残す、もらった人や親権者が内容を理解する。
こうした対応が、後日の説明材料になります。

 

渡す側にも注意が必要

財産を渡す側である贈与者にも注意が必要です。
親が認知症であるなど、判断能力に不安がある状態で、相続対策のために子どもが親の預金を引き出し、110万円以下の金額を子どもや孫の口座へ振り替えているケースがあります。
しかし、そもそも親が「あげます」と意思表示をしていなければ、有効な贈与とはいえません。親のお金を家族が勝手に動かしたと見られれば、税金だけでなく、相続人同士のトラブルにもつながります。
 

 

相続税との関係も見落とせない

亡くなった方から生前に贈与を受けていた人が、その方の相続や遺贈で財産を取得する場合、相続開始前の一定期間内に受けた贈与は、相続税の計算に加算されます。
ここでは、贈与税が実際にかかっていたかどうかは関係ありません。
110万円以下の贈与で、贈与税の申告をしていなかったものでも、加算対象になります。
この加算期間は、令和6年1月1日以後の贈与から段階的に7年へ延長されます。延長された4年分には合計100万円までの控除がありますが、生前贈与が相続税に影響する期間は長くなっています。

 

正しい知識で、正しい贈与を

きちんと成立した贈与であれば、子どもや孫への資産移転として有効な方法です。
問題は、「110万円以内」という金額だけを見て、贈与の成立や管理の実態を軽く考えてしまうことです。
贈与は、金額だけを見た税金の問題ではありません。
家族の納得、預金の管理、相続人同士の感情、将来の税務調査まで関係します。
大切なのは、正しい知識で、正しい贈与を行うことです。

 
 
 

奥税理士 ワンコ税理士の損をしない相続
よみふぁみでは、理解するのが難しい「相続」をワンコ税理士こと、奥典久税理士の協力で、「相続」に関する疑問を一問一答で解説するコラムを連載しています。
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Profile
奥税理士 ワンコ税理士の損をしない相続
奥典久税理士事務所代表(大阪市北区)
相続税法の講師経験を活かし、相続税の申告や節税対策、遺言、家族信託、事業承継まで幅広く対応。

豊富な実績と丁寧な対応で多くの相談者から信頼を集めている。

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