井上かなえ(かな姐)さんの連載コラム 【再び夫婦二人になるときがくる!?】これまで編
【再び夫婦二人になるときがくる!?】これまで編
子ども同士が同じ年代の方々、いや方々というより女性同士でしかこの話題にならないかもしれない。彼女たちに会うと必ずと言ってもいいくらい話題になるのが、
《子どもが巣立ったあとに訪れるのであろう夫との二人暮らしへの不安について》だ。
わが家の場合はすでに長男が家を出ているので、残された鎹(かすがい)は長女と次女の二人。
かすがい・・・そう、子はかすがいだ。
かすがいというのは材木と材木をつなぎとめるために打ち込む、両端が曲がった大釘のことで、材木A=夫と材木B=妻という異種なものをつなぎ留めておくための大事な大釘だ。
この釘が外れてしまったら材木はバラバラに、というわけだ。
もちろんかすがいなどなくてもしっかりと縁がつなぎ保たれている夫婦も世の中にはたくさんいるだろうし、むしろそんな家庭の方が本当の意味では結びつきはしっかりと深いのではないか? とも思う。子はかすがいでしかない家庭では、つまり子が、かろうじてつないでくれているだけで、もしかすると・・・いや、これ以上は書くのを控えさせていただくが、以下の文章をお読みになったうえでご想像いただこう。
昨今のネット情報によると、わが家の夫婦というのはかなり古いタイプの、いうなれば昭和な考えを持つ夫婦のようだ。

残念ながら妻は、その考えは古いのだということに近年になってやっと気づいてしまった。(知らなかった方が幸せだったかもしれない)
令和の世では夫婦はどちらも同じだけ家事をし、平等に育児を行う。
平成の一桁から二桁あたりのわが家ではまだ、妻だけが掃除、洗濯、消耗品の在庫を常に確認して足りなければ買い物へ行き、栄養バランスのとれた食事を作り、ごみ回収の日を把握し、庭の草むしりをし、
さらには――
妻だけが子どもの予防接種のスタンプラリーをこなし、子どもの保育所の送迎をし、子どもが熱を出せば妻が仕事を早退して迎えに行き、急な病気では当たり前のように妻だけが仕事を休み、子どもが入院した時には妻が付き添い入院し、子どもが泣けば「やっぱりママがいいんやて」とさっさと手渡され、そうやってわたしは3人を育ててきたのが自慢だ。
超人か? きっとそうなのだろう。

いやわかっている。
それは決してて自慢などではないし、むしろ今の世の中では後ろ指をさされるどころじゃないとんでもなく滑稽な話だろう。恥ずかしくて誰にも言えないレベルの話を今している。
大学生の娘たちがいつか結婚したとしても、相手にそんな扱いを受けたら速攻で離婚すべしと言い渡すだろう。
けれども若くて何も知らなかった妻は、疲れて帰ってきた夫がゆっくりくつろげるようにと家の中をせっせと片付け、美しく飾り付け、美味しい食事を用意し、お箸を並べ、おかわりのごはんを よそって差し上げ、足りないと言えば茶漬けを用意し、食後のコーヒーはいかが?お風呂をわかし、夜中に子が泣けば夫を起こしてはいけないからと抱っこしたままゆらゆら揺れて夜を明かし、おむつをかえ、トイレトレーニングをし……。
それが当たり前だと思っていた。
それが結婚するということだと思っていた。
子どもたちが少し大きくなってきてからだが、ようやく周りが見え始めた妻は、夫にもう少し家のことをやってくれてもいいのでは? 子どもに興味を持ってくれてもいいのでは? と思い始める。
が、それと同時に、今度はあり得ないほどのイライラに襲われてしまうようになる。
わたしは言えない妻だった。言って相手の機嫌を損なうくらいならとグッと我慢した。
わたしの気持ちに全く気付いてくれない夫、こんなに大きくため息をついたり機嫌悪くしたりしているのに、仕事から帰ってきて用意された晩ごはんを食べ、たまに食べる前に「今度〇〇が食べたいな」と発言し、すれ違いざまに気軽にひとの尻を触り、食後は一人でゲーム三昧。

わたしはその間汚れた食器を片付け、子どもたちを風呂に入れ、もう上がるよと風呂から夫を呼びまくっているのにゲームに夢中で全く気付かない夫。
何故妻の眉間に深いしわが寄っているのか、全く気付きもしない、察せない無邪気な夫にイラつきは募るばかりだった。
他のご家庭ではなんと夫と妻が二人で協力し合って、家事育児を分担し、家族というひとつのコミュニティーを運営して行っているという話は遠い外国の話ではないのか?
何も知らなかった頃に戻れたら、わたしは幸せなままだったのだろうか。
次回はこの夫婦の二十数年後、現在の姿です。
続きは9月のコラムをお楽しみに・・。
【プロフィール】

料理ブロガー、料理家。兵庫県在住。
2005年にスタートした3人の子どもたちのリアルな日常と日々のごはんを綴ったブログ「母ちゃんちの晩御飯とどたばた日記」はライブドアブログで2018年に殿堂入りし、レジェンドブログに。
「1品1色で!野菜の”カラフル”つくりおき」(NHK出版・ムック)など著書多数。
東京、神戸での料理教室開催、雑誌、TV、食品メーカーのレシピ考案などでも活躍中。
2022/7/25発売の最新刊

1品1色で! 野菜の“カラフル”つくりおき
NHK出版(ムック)
NHKのEテレで絶賛放映中
月~木曜の21時55分~22時
(再放送は翌週月~木曜の11時55分~12時)
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